院内でのサプリ販売について(PDF)

クリニックでのサプリ・化粧品販売は違法ですか?

クリニック内でサプリメントやスキンケアを販売したいので、ある専門家に確認したら、『医療機関は医療法第7条で非営利とされているので販売出来ない』と言われました。本当ですか?

結論を先に言いますと、これは、その専門家の見解が間違っています。

医療法第7条第6項(令和三年三月一日施行、令和元年法律第七十一号)には「営利を目的として病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第四項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる」と書かれています。つまり、医療法第7条は、医師・歯科医師以外のもの(人・法人)が、医療施設(病院・診療所・助産所)を開設する際の条件について書かれており、医療資格を持たない人や法人が、営利目的で医療施設(病院・診療所・助産所)を開設する事を禁じている条文なのです。そして第6項には「医師・歯科医師以外のものが営利を目的とする場合、許可を与えない」と書いてあるだけで、医師・歯科医師には何ら言及していません。つまり、医療法第7条は、医師や歯科医師には適用外の(関係ない)条文と言えます。

では、病院・診療所など医療機関での物販は合法なのでしょうか?

この疑問に関しては平成26(2014)年6月24日に閣議決定され、同年8月28日に厚生労働省医政局総務課より、医療担当部(局)担当者宛に通達され、翌年(平成27(2015)年6月16日に再度、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会・日本病院会など日本医療界を代表する関係40団体と、地方厚生局の医療課長宛に、厚生労働省保険局医療課長より通達され周知された「医療機関におけるコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売について」という下記の通達文書に答えが書いてあります。

「今般、規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)において、医療機関におけるコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売については、これが可能であることを明確化し、周知を行うこととされています(参考資料参照)。医療機関においてコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売を行うことは、当該販売が、患者のために、療養の向上を目的として行われるものである限り、以前から可能ですので、適切に取扱われますよう、お願いいたします。」

上記の通達で明らかな様に、病院・クリニック・助産所などの医療機関で、コンタクトレンズ等の医療機器、サプリメント等の食品や飲料品などの物販は、それが患者のためになり、療養の向上を目的としたものである限り、可能なのです。また同様の理由で、皮膚科・内科・小児科・産婦人科・婦人科などの診療科でスキンケア・ヘアケア・ボディケアなど、患者さんの療養の向上のために、皮膚や髪を健やかに保つ目的の物品を院内で販売する事も合法と考えられています。

クリニックでサプリメント等の通販は出来ますか?

これは、医業の範囲内かどうかが問題となります。

医療法上、医療機関は原則として医業の範囲内の行為しか行うことはできません。そのためサプリメント等の通販が医業の範囲内といえるかが問題点となります。医業の範囲は大きく4つありますが、そのうち許可や申請を必要としない業務は、医療行為そのものである「本来業務」と本来業務に附随する「付随業務」です。物販は医療そのものではないので「本来業務」ではありませんが、「付随業務」であれば、医業の範囲内として行う事が可能、と厚生労働省より発出されている「2019(平成31)3月29日現在の医療法人の業務範囲」に明示されています。そして同文書で「付随業務」とは以下の様なものと例示されています。

「① 病院等の施設内で当該病院等に入院若しくは通院する患者及びその家族を対象として行われる業務又は病院等の職員の福利厚生のために行われる業務であって、医療提供又は療養の向上の一環として行われるもの。したがって、病院等の建物内で行われる売店、敷地内で行われる駐車場業等は、病院等の業務に附随して行われるものとされ、敷地外に有する法人所有の遊休資産を用いて行われる駐車場業は附随する業務に含まれないものとして取り扱います。

② 病院等の施設外で当該病院等に通院する患者を対象として行われる業務であって、当該病院等において提供される医療又は療養に連続して行われるもの。したがって、当該病院等への、又は、当該病院等からの患者の無償搬送は、病院等の業務に附随して行われるものとされ、当該病院等以外の病院から同じく当該病院等以外の病院への患者の無償搬送は附随する業務に含まれないものとして取り扱います。

③ ①及び②において、当該法人が自らの事業として行わず、当該法人以外の者に委託して行う場合にあっては、当該法人以外の者が行う事業内容が、①又は②の前段に該当するものであるときは、当該法人以外の者への委託は附随する業務とみなし、①又は②の前段に該当しないものであるときは、附随する業務に含まれないものとして取り扱います。」

上記から、(A)入院・通院する患者とその家族、職員を対象としたものである事、(B)医業または療養の向上の一環として行われるもの、(C)医業または療養と連続して行われるもの、の3点をクリアしていれば医業の範囲内、それ以外は範囲外と判断されると考えられます。

つまり、医療機関の診察を受けに来た特定の患者さんやご家族を対象とした物販やサービスは可能ですが、インターネット等による通販は、患者さん以外の不特定多数も対象となる行為となるため不可能ということになります。

また、療養の向上を目的とする必要があることから、医療機関内であっても療養の向上と関係のない物品の販売はできません。

サプリメントやスキンケア等を販売することは療養の向上の目的に適うことから可能ですが、療養の向上とは関係がない物品、例えば「貴金属やアクセサリー」などは不可能ということになります。

サプリメント等の通販をMS法人に委託する事はできますか?

これは、場合によります。

上記③は、医療機関が「付随業務」などを、医療系の事業等を行うMS(メディカルサービス)法人等に委託する事を想定した条文です。

この場合も院内での物販など医業の範囲内の業務を委託する事は問題ありませんが、医業の範囲外の事業、例えば不特定多数に対するインターネット販売などをMS法人等に委託するのは問題となります。

結局、医療機関が業務委託する事自体が問題なのではなく、委託する事業が医業の範囲内か否かが問題となるという事です。

医師や歯科医師が患者さんやご家族以外の不特定多数に対して優れたサプリメントやスキンケア等を提供したいのであれば、医療機関とは関係のない別法人を設立し、当該法人が独自の事業として物販を行うか、MS法人等にその事業を委託するという方法をとることが安全です。

委託に関してご関心があれば、まずは当会・事務局(担当・小林)までご相談ください。